園で一番手強かったのは、園長でも主任でもない。
それは…「栄養士さん」。
保育士たちが汗だくで動く横で、給食室から大声を上げてくるその姿に、私は思いました。
「こいつには、絶対負けたくない」
「担任」なんて聞いてない
私は、もともと栄養士としてこの園に就職しました。
保育に入ることは、実は最初から分かっていたこと。
でも、「保育補助として」と聞いていたので、まさか自分が担任になるなんて思ってもみませんでした。
だから、担任を任されたときは正直戸惑いました。
「え、それって私がやるの?」
自信がないとかそういう問題ではなく、話が違うんじゃないかという、強い違和感があったんです。
本当は向いていないと思っていた栄養士の仕事
実は、栄養士の仕事が自分に合っていないことは、なんとなく感じていました。
給食室で黙々と作業するよりも、人と関わっているほうが楽しいし、気が楽だったからです。
でも、私は大学まで出してくれた親のために、資格を活かして働こうと思っていた。
「せめて栄養士として働き、いずれは管理栄養士に・・・」
そんな気持ちがあって、方向転換することにためらいがありました。
否定され続けた日々
否定され続けた日々。
子どもたちの些細な変化にも目を配りながら、必死にやっているつもりだった。
でもどこかで何かが足りないと、いつも言われていた。
給食を取りに行くのが、たった1分遅れただけで——

なんで遅くなったの?
あなたのクラスが来ないと、他のクラスに出せなくなるのよ
時間にとても厳しい栄養士に、ピリついた言葉を浴びせられるのは毎日のことだった。
わかっている。時間を守るのも仕事のうち。
次は絶対遅れないようにしないと・・・
言い訳ひとつ許されない空気がそこにはあった。
特に辛かったのは、ミーティングでの扱いです。
全職員が集まる場で、あからさまに怒られることが何度もありました。
子どもとの関わり方、活動の進め方、声のかけ方…

今日はどうしてその活動をしたんですか?
皆はこのオモチャで遊ぶこと、どう思いますか?
と。
そんな質問を、みんなの前で突然ぶつけられる。まるで公開処刑。
「今日は何をどこをツッコまれるんだろう・・・」
と毎日のミーティングが本当に恐ろしい時間でした。
園の変化と、自分の確信
しばらくして、栄養士と園長が辞めた。
栄養士は辞めるときに

私がいなくなってこの園大丈夫なの?
なんて言い放った。それを聞いたとき、正直

何言ってんだこの人
と思った。
辞めてくれたお陰で園の雰囲気もガラッと変わり、制限されていたことが徐々に減っていき
明るくなって、みんなの笑顔が増えて。
子どもたちものびのびと過ごせるようになったんです。
それを見たとき、私ははっきりと確信しました。

この保育なら私はもっとやってみたい
まとめ
あの毎日否定され、叱られ、自信を失いかけた日々。
特にすごく嫌だった栄養士の存在は、私にとって大きな試練でした。
時間に厳しく、理不尽に感じることも多かったけれど、決して間違ったことばかりではありませんでした。
私がまだ社会人一年目で未熟だったことを、彼女は見抜いていたのだと思います。
その厳しさのおかげで、世間は甘くないこと、仕事の厳しさを身をもって知りました。
そして何より、私に「保育士になる」という目標を持たせてくれたのも、あの栄養士だったのです。
だから、嫌な思いもしたけれど、今となっては感謝しています。
あの経験があったからこそ、私は本気で保育士を目指し、子どもたちや職員にとって優しい園を作りたいと強く願うようになりました。